本年は、戦後80年という節目であると同時に、政府による軍備拡大が進み、アジア地域でも戦争の危機が高まりつつある中、8月に安芸太田町戦没者追悼・平和祈念式典が行われます。私は、6月定例議会において、式典における町長の式辞について一般質問を行いました。以下は、その質問の中で私が述べた意見です。
アジア太平洋戦争で、当時の大日本帝国は侵略戦争遂行し、アジア諸国の人々約2000万人を死に追いやり、国内では軍人民間人合わせての約310万人の犠牲を出しました。この戦争は天皇制国家の護持を目的としたものであり、その帰結として、東京大空襲を初めとする各地での空襲、沖縄での住民4人に1人が命を奪われた悲惨な地上戦、さらには広島長崎への原爆投下となりました。
現在、政府は軍事費の2倍化、琉球弧諸島の急速な軍事要塞化を進めています。また、中谷防衛大臣は今年3月、アメリカのヘグセス国防長官との会談で、「東中国海、南中国海、朝鮮半島を中心とした地域を一体的なシアター(戦時に一つの軍事作戦を遂行する地域)として、日米韓豪比が協力して展開しよう」とワンシアター構想を提案しました。ヘグセス長官はこれを歓迎した、また『有事の場合は日本が前線に立つ』との発言の報道もあります。日本が再びの中国侵略戦争において前面に立ち、主導的役割を果たすという方針の表明です。 6月3日付け日経新聞で、『非核三原則見直し「核共有も検討を」 元政府・自衛隊高官が提言』との見出しで、日本の非核三原則の一部見直しや米軍の核兵器を日本国内に配備する「核共有」の必要性についての提言が報じられました。極めて速いペースで戦争体制が整えられています。
今月19、20日には、天皇が広島を訪問する予定です。これに伴い『天皇陛下奉迎広島県委員会』が結成され、議員に対し委員の就任や奉迎事業への協賛、会費納入を依頼する文章が届きました。 湯崎県知事が名誉会長へ就任し、広島県、県教育委員会、広島市、市教育委員会が後援していますが、この委員会の事務所連絡先には任意の政治団体である日本会議広島の所在地が記されています。 天皇出迎え行事には広島市内の児童が動員されています。さらに問題なのは、『参加する児童の氏名や学級、読み仮名など個人情報を事前に宮内庁に提出すること』の同意が求められていました。結局、個人情報は不要だったことが判明しましたが、県・市を挙げてのこの動きには、市民運動団体、労働組合、被爆者団体から批判の声が上がっています。
奉迎事業の一つとして、提灯をもって天皇を迎える提灯奉迎が予定されています。これはかつて南京陥落時に行われた提灯行列を彷彿させるものです。南京陥落はその前後に南京大虐殺があり、その非道な行為の歴史を踏まえると、提灯奉迎を行うことに私は強い憤りを覚えます。昭和天皇はアジア太平洋戦争における戦争責任をとることはありませんでした。またその後を継いだ平成天皇、そして現在の天皇も戦争に対する謝罪はしていません。しかし、被爆者の苦しみや沖縄の基地負担の重さは、過去の戦争の延長線上にあります。今、戦争の足音が再び聞こえてくる情勢の中で、天皇の広島訪問とそれに付随する奉迎行事には、私は明確に反対の意を表します。天皇制をもって再び侵略戦争に向かう一歩に広島が利用されることがあってはなりません。
戦争遂行のためには真っ先に切捨てられるだろう、地方の小さな町だからこそ、この恵まれた環境の中で、命を慈しみ、育むまちだからこそ、戦争絶対反対・核兵器廃絶を真正面から訴えることが重要だと考えます。